メイギカ 第1章 第0話 〜魔人の娘〜

 

「では、この娘の処刑を決定します。」

「異議なし」

「異議ありません」

「早めの刑の執行を命じる」

「はい」

「では、あさって・・・新月の夜に行いましょう」

 

 

「決まったな」

「そうじゃな。これで安心だわい。あの娘には悪いが…何かあってからでは遅いからな」

「おっしゃるとおりです。…では、お二方もありがとうございました」

「では、刑執行のときに、また…」

「はい。ではあさってまで何も起こらぬよう、見張りを強化します」

「それがよい」

 

カタン

 

小さな音がして、狭く寒々しい石壁の小部屋に入れられた娘は顔を上げる。

年の頃は17〜18歳。まだ子どものようなあどけなさも感じられる美しい顔立ちだが、その表情は憔悴しきって青白い。

娘の名は遙。

ここ、端(タン)の村で5年ほど前から生活している。

3年前に母親を病気でなくし、現在はひとり、端の村のさらにはじで暮らしていた。

 

彼女が何故この牢に入れられているか、理由はひとつ。

魔法を使ったから。

この地方では、魔力を持つ魔人(まびと)は忌み嫌われ、排除されるべき存在なのである。

 

彼女は自分が魔人であることも、魔人がよく思われないことも知っていたが、行く当てもなくこの村で生活してきた。

村人達は彼女や、もう亡くなった彼女の母親が魔人であることをうすうす感づいてはいたが、そのことには触れないできた。

それは、けして彼女らを不憫に思っていたからではない。

魔人を恐れていたからである。

村人達は魔人に対抗するすべを持っていなかったからだ。

だから、村で一緒に生活していても、どこか一線を引いていた。

 

そんな時、村に帝国の役人がやってきた。

「今日からこの村はイーレック帝国の配下となる」

それだけだった。

 

どうやら戦争があり、以前端の国を支配していた小国は滅びたらしい。

こういった僻地の村ほど、どこの国に配置されようと、皆無関心な場合が多い。

税率が大きく上がるとか、そういった自分達に直接影響を与えるようなことさえなければ。

この村でも大体の反応がそうだった。

 

ただ、イーレック帝国は、魔人に対し迫害とも言える政策を行っている国だった。

彼らは魔人狩りを行い、多くの魔人たちを処刑してきているという。

 

そのイーレック帝国の配下となったため、端の村でも魔人狩りを行うよう、役人達がやってきたのである。

 

そして、もともと魔人だという疑いを持たれていた彼女は、魔力があるかどうかの確認を受けた。

そのやり方は、家にモンスターを入れるという荒っぽいもの。

 

彼女は魔力をコントロールする事を教わっておらず、危険に対応して魔力が勝手に放出されてしまったのだ。

そうして彼女は魔人狩りの対象として捕まり、処分を待っている状況であった。だが大体の処分は死罪となっている。

 

 

そして先ほど、例外にもれず、彼女の死罪が決まった。

 

 

「お前の処分が決まった。あさっての新月の夜だ」

 

新月の夜…それは、一般的に魔人が持つ魔力が最も薄れるといわれている。

実際はただの迷信か、真実か・・・彼女は知らない。

ただ、今の彼女にとっては新月の夜という言葉は死の宣告以外の何物でもない。

 

「はい…」

その宣告に彼女は一言頷いた…

 

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一言:早く進ませてェ…