メイギカ 第1章 第1話〜生への葛藤〜

 

「では、これより死刑を執行する。娘を連れて来い」

「はっ」

 

真っ暗闇の中、人々がうごめく。

新月で、かつ小雨の降り止まない端の村。

そこに唯一ある広場には異様な光景が広がっている。

 

広場の真ん中に作られた悪魔の台座は、生贄が来るのを今か今かと待ち望んでいるようだ。

これから行われることが何かもわからず雨に濡れながら遊んでいる子ども。

無表情で動く役人達。

村人達は皆ひそひそとささやきあう。

 

かわいそうにねぇ…でもここにいられるのも困るし

魔人だったものね

魔人もいなくなるしこれで安心だ

 

そこへ魔人の娘がつながれ連れてこられると、村人達は皆押し黙った。

 

「やーい、まびと!さっさと死んじまえ〜!!」

「やめなさい!呪われるわよ!!」

 

少年がはやし立てる。

その母親は急いで子どもの口をふさぐ。

 

「…」

 

娘の表情は変わらないが、瞳には悲しみの色が揺れていた。

少年と娘は何度か遊んだこともある仲だ。

それだけに、ショックは大きいだろう。彼の母親の言葉も。

 

ただこの二人の言葉はこの地方一帯では極当たり前の感情なのだ・・・

 

そんな仲、着々と処刑の準備は整っていく。

娘は小突かれ、のろのろと処刑台に向かう。

 

 

「これより、魔人遙を死罪に処す」

 

 

 

処刑法は…火あぶり。

 

 

 

 

 

(どうして、どうして?)

 

石牢の中で、遙は考え続けていた。

 

自分がどうしてこんな目にあうのか。

自分はどうして魔人に生まれてしまったのか。

 

疑問はひとつも解決しないまま、刻々と処刑の日がせまる。

 

 

こんな思いばかりするのなら、生まれてきた意味なんかあったの?

 

幼い頃から非魔人の国にいた。

迫害の日々。

魔人ということを隠して生きても、やがて露見する。

そして誰も自分達を知らない地を求めて母と2人、どこも当てなく逃げ惑う。

生きていくためには魔力は必要であったのだ。

火をおこしたり、水をきれいにしたり、明かりをともしたり。

お金を持たない分魔力に頼るほかなかった。

 

そんな心労がたたってか母は死に、一人で生きて行かなければならなくなった…

 

そして今。

ただ魔力を持っているというだけで。

自分は明日処刑されるのだと。

 

怒り、悲しみ、嘆き。あらゆる負の感情が入り乱れる。

 

「っ!」

思わず叫びだしたくなるのをこらえ、こぶしを握り締める。

 

どうしてよ!?

どうしてこんな目にばっかり…

 

今まで自分を生かしてくれていた、魔力。

そのせいでたくさんの酷い目にもあった。

この力は私にとって何なの?

 

「もう嫌…」

 

こんな辛い目にばかりあって。

母さんも死んじゃって。

 

 

どうせならさっさと殺してよ

こんなところに閉じ込めて。

 

ガッ!!

手に鈍い痛み。

視線を移すと、石畳の床が放射状にえぐれている。

その中心部に自分の拳。

 

コントロールが聞かなくなってるな…

ぼんやりとそんなことを思う。

 

「なんの音だ!?」

 

四六時中遙を監視する看守がやってくる。

ただ、窓の外をうつろに眺めている彼女を見ると、肩をすくめ戻っていった。

 

窓の外は、雨。

 

 

「もう嫌だよ…」

 

でも。

 

 

まだやりたいことなんか何一つできてない…。

 

思い起こすのは、ひとつの国。

魔法王国メイギカ。

魔人が普通に暮らせる国。

 

母の話でしか聞いたことがないけれど。

ずっと憧れだった。ずっと行きたかった。いつか行けると信じていた。

でもその夢は、もう叶いそうにない…。

 

 

「それでも…」

 

辛くても辛くても。

溢れてくる渇望

 

「死にたくない…」

 

 

もっと生きたい

そう思ってしまうのは何故?

 

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一言:いろいろ突っこみどころはありますがおいおい説明していきたいデース…

生きたいって思うのは本能だよね。

 

…ってカルく言ってしまう私。…ダメ?

まぁ遙の気持ちとしては、もっといろいろ楽しいこと経験したいよー的なのかな?私はそうだし。大体の生きてる理由。

人の気持ちって結構言葉で説明するのは難しい。

んでやっとここにきてタイトル登場。