メイギカ 第1章 第10話 〜祈り〜

 

「あきらめちゃいけない。まだ何も終わっていないのだから」

 

そう言われて、遙はもう一度頷く。

そうだ、今までだって何度も絶体絶命のピンチを乗り越えてきた。

君なら大丈夫と、仮面の男は私を信じてくれている。

 

彼の言葉が、大事なことを思い出させてくれた。

あきらめてはいけない。私は生きると誓ったから。

 

攻撃する様子のない二人に、気味の悪い笑みを浮かべたまま隊長が猫なで声で話しかけてくる。

 

「さて、どうやって料理しようかな?ことに仮面君。さっきの調味料のお味はどうだったかい?」

「まあまあでしたね。残念ながらぴんぴんしている。でもあんたの狙い通りいま俺は魔法を使える状況にない」

 

仮面の男の返事に、いたく満足そうに大きく頷く。

しかし仮面の男は余裕そうにほほ笑みを浮かべ、さらに脱いでいた服も軽く羽織りながら言い放った。

 

「でもそんなものハンデにもならない」

「てっめぇ〜!!…お前ら!弓用意!!うて〜〜〜!!」

 

隊長の号令に、弓矢部隊がさっと矢をつがえる。

仮面の男がささやく。

 

「『風よ、我に従え。悪を蹴散らしその力、我に示せ』。言って」

「風よ、我に従え。悪を蹴散らしその力、我に示せ」

 

弓矢が飛んでくる。

矢を蹴散らすような風。強く念じる。

 

ゴウッ!!

大きなつむじ風。放たれた矢を巻き込んで、弓矢部隊に襲いかかった。

 

「うわぁぁぁ!!」

「くそ!!お前ら何してる!行け!やれっ!機械も準備しろっ!!」

 

言いながら、剣を抜き放ち隊長が突進してきた。

 

「その調子。魔力とは、すべてをつかさどる精霊たちへ意思を伝える力。強く念じれば彼らは応えてくれる」

 

仮面の男は言いながら短剣を抜く。

 

「うおおおお!きさまら〜!!」

 

キィン!!

 

またも短剣で受け止める仮面の男。

隊員たちがめいめいこちらに向かってくる。

隊長とにらみ合ったまま仮面の男は言う。

 

「『大地をつかさどりし精霊よ、我に力を』!!」

「大地をつかさどりし精霊よ、我に力を!」

 

どどどど…

 

「うわぁ!!じ、地面が!!」

 

大地が大きく揺れ動く。特に切りかかってこようとする隊員たちの足元は地面の陥没や隆起が起こるほどだった。

機械の支度をしていた隊員たちも作業を中断させられる。

 

「くそぉ!!」

「おっと!」

 

遙のほうに切りかかろうとする隊長を、仮面の男が止める。

二人は何度も剣を合わせた。

 

「きっ機械はまだか!!早くしろ」

「もうすぐです!」

 

息が上がってきている隊長に比べ、仮面の男の動きはほとんど変わらない。

防戦一方のように見えるが、焦りを感じてきているのは隊長のほうだった。

遙は教わった呪文を唱え、たまにバランスを崩しながらも襲い掛かってくる男たちから逃げていた。

 

カキィィン!!

 

ひときわ大きな音がして、隊長の剣ははじかれ手から離れた。

そこへ仮面の男は短剣の切っ先を突き付ける。

 

「いろいろと聞きたいことがある」

「くっ…」

 

悔しそうに顔をゆがめる隊長。

 

「なぜおまえたちイーレックの国の部隊がこんなところで魔人を追いかけまわしている?グラスウォールは許しているのか?」

「く…グラスウォールがどうなんて関係はない。わが帝国の罪人を捕まえるためだからな!」

「罪人だと・・・!」

 

罪人という言葉に、仮面の男は声をあらげる。

そこへ隊員の声がとぶ。

 

「隊長!!そこからお逃げください!機械の準備が整いました」

「早くエネルギーをためろ!!」

 

見ると、遙をどうにかしようとしていた者たちも逃げ始めている。

彼女自身は無事なようだった。

遙に気を取られている隙に、隊長は短剣から逃げた。

仮面の男は遙のそばに戻る。

あの機械をどうするか。決めてはいたが、うまくいくかはわからない。

とりあえず、機械が力を溜め終わるまでに対策をしなければ。

 

「ど…どうするの?このままじゃあの機械に…」

「君の力を貸してくれ。俺が障壁(バリア)を張る。かなり魔力がいるだろう。まだ完全に俺の魔力は戻りきっていない」

「力を貸すって…どうやって!?」

 

仮面の男は遙の手を握った。

 

「俺に魔力を注ぎ込むイメージでいい。そうすれば俺が君の魔力を使える。…時間がない。いくぞ」

 

そう言って仮面の男は小さく呪文を唱えはじめた。

遙も目を閉じ、集中してイメージを強めた。

 

二人の周りには淡く光る壁ができてきていた。

 

(お願い、私たちを助けて!!)

遙は精霊に祈った。

 

「もうすぐ発射です!」

「行け!!」

 

機械の発射口が光りだす。

 

「発射!!!」

 

とたん、大きな衝撃が辺りを襲った。

 

 

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一言:呪文はめんどくさいのでできれば省略したい。。。