メイギカ 第1章 第3話 〜「機械」〜

 

信じられない光景が広がる。

 

 

炎は煌々と燃え上がり、あたり一体を明るく照らし出した。

遙の体は確かに炎に包まれている。

しかし、彼女の体に何の変化もない。

靴が少し燃えている以外、何も変わらない姿で炎に包まれている。

 

彼女の体が、一瞬強く、青白く光った。

 

ゴウッ!

 

突如強風が吹き荒れ、草木が大きく揺れる。

炎はますます強く燃え上がり、天に届く勢いだ。

小雨などものともしない。

そんな中、誰かが叫んだ。

 

「魔人が…魔人が、浮かんでいるぞ!!」

 

 

遙を張り付けていた手かせ、足かせはいつの間にか外れ、炎の中彼女は浮かんでいた。

強風にあおられた長い髪の毛が巻き上がる。

 

「に、逃げろ!!殺されるぞ!!」

 

あたりは再びパニックに。

村人達は悲鳴を上げながら逃げてゆく。

役人達も我先にと逃げ出す。

だが、隊長とおぼしき男が叫ぶ。

 

「何をやっている!!あの機械をもってこい!!」

 

男の声に、我に返った何人かの役人達が大きなものを運んできた。

鈍く光る金属でできた、不思議な構造の物体。

さまざまな配線が施されている、なにやらまがまがしい球体。

魔人に対抗するための非魔人の手段。

「機械」である。

 

 

「作動させるぞ!」

 

丸い小さなボタンを押し込むと、「機械」はゴゴゴゴゴ・・・という重低音を奏でた。

球体の面が色とりどりに光り、機動を開始している。

 

「よし、これを魔人に向けて発動させるぞ!」

 

ウグィ〜ン…

 

球体の1部分から砲身が飛び出す。

その砲身はしっかりと遙に向いた。

 

 

グ・・・・ググ・・・

 

砲身が光り始める。

遙はすっと、「機械」に向き直った。

 

 

「発射だ!食らえ!!魔人め」

 

 

キィーーーン

 

 

耳をふさぎたくなるような甲高い音とともに砲身から光が放たれ、遙を包み込む。

皆、あまりの眩しさに目を背けた。

 

 

 

「なにっ?」

 

光がやむが、相変わらず彼女に変化はない。

炎がさらに強く燃え上がり、広場の中にいるものはちりちりと熱さを感じずにはいられないほどだった。

彼女はゆっくりと降りてきた。

浮いたまま。

表情は読み取れないほど、炎の勢いは増している。

 

「クソ!効かないなんてなんて化け物なんだ!」

「最新のものではないからか!?役立たず!!」

 

 

役人達も「機械」を捨て置き、我先にと逃げてゆく。

彼女がゆっくりと降り立つ。

すっと一歩を踏み出した。

 

 

まるで炎から生まれでたみたいに。

 

誰もいなくなった広場を、彼女は無言で出て行った。

その目はまだ、怒りで燃えている。

 

 

遺されたのは、ただの金属だけ。

 

 

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一言:進みおせぇ…(毎度)

ここでやっとプロローグがお終いって感じかなァ?