メイギカ 第1章 第5話 〜仮面男との出会い〜
とにかくさっきの仮面の男に話を聞こうと思い、あわてて宿に入っていった遙。
だが、男の姿はロビーにはなく、もう部屋に引っ込んでしまったらしい。
仕方なく、受付のおじさんに聞いてみた。
「あの!さっき仮面の男の人来ましたよね?部屋ってどこですか!?」
「あ?ああ…2階の部屋だが…突き当たりだよ。でも、あいつ魔人だったんだろ?気をつけたほうがいい」
そういって肩をすくめる。
「まぁ魔人だと確実に証明されちゃったことだし、明日ぐらいには出て行ってもらいたいね…周りの客からの評判が悪くなったら困るし」
「はぁ・・・そうなんですか」
ここでも魔人の評判はよろしくないらしい。
あの人も役人に見つかったら処刑だろう。
明らかに知り合いじゃない遙に簡単に部屋を教えるあたり、あの仮面の男の安全など気にしていない様子が伺える。
とりあえず宿のおじさんに小さくお礼を言い、2階へあがった。
突き当りの部屋の前まで来る。
ここに…あの人が。
生まれてこの方母親以外の魔人にはろくに出くわしたこともない遙は、変に緊張してドアの前で腕をノックの形をしたまま固まってしまった。
ううう…緊張するよーと口の中で呟き、ノックしようとして腕を伸ばしかけ引っ込める。
そんな不毛な動作を何度か繰り返していると、いきなりドアが開いて彼女は間抜けな悲鳴を上げてひっくり返してしまった。
「ほぎゃ!」
「え。悪い・・・」
ドアを開けた本人も驚いたらしい。あわてて彼女を助けおこす。
「あ・・・す、すいません!あは、ははは…」
「いや…なにか用か?さっきからいたようだけど」
気付かれてた。遙は恥ずかしくなってしどろもどろになって言い訳を探す。
だがこんな突き当たりにいるのはこの部屋に用がある以外ない。
遙は覚悟を決めてぐっと顔を上げた。
「あの!…魔人、なんですよね…?」
「…まあね。それで、なにかな?」
仮面の男は訝しげに聞いてくる。といっても、表情はまったく読めないが。
魔人だと知ってなお話しかけてくる彼女がめずらしいらしい。
なんの用かとたたみかけられ、遙は詰まってしまった。
ただ話を聞きたいだけで勇んでここまできたけれど、なにか用かといわれるとわからない。
とにかくメイギカのことを知っているか聞こうと口を開きかけた。
「あの、メイ…」
「しっ!」
一瞬で厳しい表情になった仮面の男がしゃべるなと遙の口を押さえ、窓からそっと外の様子を伺った。
遙も何事かと一緒に窓の外を見やる。
外が騒がしい。
「あっ!」
遙は見覚えある服を着ている男たちが宿に向かってくるのを見た。
そのうちの何人かは見覚えがあり、隊長と呼ばれる男もいた。
ちょうど間が悪いことに役人達がやってきたのだ。
こちらに来ているということは村人達は自分達を助けてくれたこの男を売ったらしい。
まぁ仕方のないことだ。村人を責めても仕方ないことを遙は良くわかっていた。
だが確実に宿に向かってくる男たちを見て、一気に体が緊張する。
仮面の男が呟く。
「チッ…気付くのが遅すぎたようだ。どうするかな…」
仮面の男は遙を見る。
目に見えてわかるほど青ざめている彼女に訝しげに呼びかける。
「おい。どうした?君はさっさと出て行ったほうが良い。悪いけど俺はここにはいられないからな」
そういって部屋に戻ってしまった。
遙はというと、恐怖で体が思うように動かない。
今までは役人に出会っても、隠れたり逃げたりしてやり過ごすことができた。
でもここは2階。つきあたりで、おまけに窓の外にも役人達がいる。
あの隊長はすぐ、遙を見つけ出すだろう。
絶望的だった。
遙が怯えて固まっているところに、仮面の男はいつも持っているらしいあの謎の袋とリュックを抱えて戻ってきた。
もう荷造りはしていたらしく、旅の装いに着替え、リュックも少し膨れている。
とっくにいなくなったと思っていた彼女がまだいるのを見て驚いていた(らしい)。
「まだいたのか!?巻き込まれたいのか?」
「うっ・・・」
カタカタと震えている彼女を覗き込み、仮面の男は驚いたように呟く。
「君まさか…魔人狩りで逃げた女…?!」
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一言:長くなっちゃったんで分割。
展開遅い。ホントに遅い。
仮面の男って打つのめんどい。でも仮面男だとなんか響きがヤダ。