メイギカ 第1章 第7話 〜鬼ごっこ・inミディール〜

 

「化け物め!絶対に逃がさん!!」

 

そんな声を聞きながら、遙たちは落ちていった。

 

落ちていっていた。

 

「うわああああああ!!」

 

「おい、あんまり耳元で叫ばないでくれ」

「わっ!」

 

驚くほど近い位置に、遙を道連れに飛び降りた男―仮面の男の顔があった。

仮面の目の位置からは相変わらず表情がうかがえない。

やっと我に返った遙はわふわふと慌てふためきながら目をぎゅっと閉じしがみついた。

 

「そんなに怖がられるとなんだかなー…高所恐怖症?」

「ちがっ!!だって、落ち、落ちてっ!」

「落ちてない。降りている」

 

彼の言葉にゆっくり目を開けてみると、自分達は彼の言うとおりゆっくりと「降りて」いっていた。

そのままふわりと地面に降り立つ。

 

「すごーい…」

「感心してる場合じゃない。逃げなきゃまずいだろう」

「そ、そうだ!逃げなきゃ!!」

 

降り立ったのは先ほど仮面の男が手当てを施した、村の出口に近い場所。

宿からは大きな物音が聞こえ、隊長とおぼしき怒号が聞こえる。

 

「さっさとどけぇ!!逃げられるぞ!」

 

どうやら狭い階段で機械を準備していた部下たちと鉢合わせしているようだ。

 

今のうちにと村の出口に向かって走った。

 

しかし…

 

「!?あれは魔人の男だぞ!」

 

入り口にいた村人達が叫んだ。

 

「その二人を逃がすな!追え!!」

 

後ろから隊長の怒号が聞こえてくる。

振り返ると、宿の入り口から隊長が転がるように飛び出してきた。

村人達は隊長の声にわたわたとこちらに向かってくる。

その目には怯えの色が明らかだった。

 

「チッ。…逃げるぞ!」

 

言うなり仮面の男はきびすを返す。

あわてて遙も後を追った。

 

「待てぇ!!」

 

こうしてミディールの村を舞台に追いかけっこが始まった。

 

魔人2人 対 ブチ切れの隊長・一部の隊員・勇気ある村人たち

 

他の村人たちは走り去る面々を?顔で見送るか、魔人を恐れて家に引きこもるか、のどちらかだった。

 

二人はがむしゃらに走った。仮面の男は動きづらそうなマントをなびかせながら軽やかな走りを見せている。

とりあえず彼を追いぜいぜい走る遙。

体力には自信があったが、変に力を使ったせいか体が重たい。

少しづつスピードが落ちてきているのがわかった。

怒号を上げながらちゃっかり馬に乗り隊長が追いかけてくる。

その少し後ろを臆病ではない隊員たちが、勇敢な村人たちと必死に追いかけている。

 

どどどどという走る音に、訳を知らない村人が窓を開けるが、追いかけっこ集団のあげるつちけむりを浴びてごほごほと咳をするだけだった。

 

 

遙は疲れのせいか足がもつれかけ、よろめいた。

そこへ体長が追いつき腕を伸ばしてくる。

仮面の男はあの狭そうな視界の中でその様子に気づいたようで、隊長より一足早く遙の腕をつかみ抱えこんだ。

 

「!!」

「待てぃ!!!」

 

仮面の男はちらと振り返り口元だけでにやりと笑った。

遙はが眼を白黒させている間に、彼は加速し、あっという間に引き離す。

気がつけば村の出口に近付いていた。

 

「待ちやがれっつってんだろ!」

「隊長!!」

 

相変わらず隊長はブチギレの様子。馬を追い立て、負けじと加速する。

隊長の乗った馬は目を血走らせ、涎を垂らしながらもけなげに加速する。

その後ろに、やっぱり馬に乗った隊員が隊長に呼びかけた。

仮面の男は遙を抱えたまま、怒鳴り声に耳も貸さず、そのまま村を走り出ようとしていた。

 

「仮面野郎め!これでもっ!…くらえっ」

バシュッ!!

 

隊長が放ったもの。それは、弓矢。

 

「うっ!!」

狙いは心臓。しかしそこからはそれたものの、仮面の男の脇腹にかすっていった。

しかし彼はそのまま走り続けた。

隊長は満足げにスピードをおとした。

 

「当たりさえすればいい」

 

 

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一言:ひさかたぶり。

最近忙しい・・・>_<

そしてどっかで見たような展開。

アタイの空飛びたい願望があふれ出してるね♪笑