メイギカ 第2章 第16話 〜とある男たちの会合〜

 

月と星だけがその存在を主張する、真っ暗な夜中。

 

大きな建物が立ち並ぶ区間の一角に、ひときわ目立つ建物がある。

建物というか宮殿と言った方がいい豪華さだ。

周りが寝静まったこの暗闇の中で、ここだけ煌々と明かりがともっている。

今、その建物の中に、一つの馬車が光に吸い込まれるかのように消えていった。

 

 

 

建物の中の一室では、男が一人で揺り椅子に座り本を読んでいる。

その部屋はきらびやかな装飾が施され、たくさんの美術作品が並べられていた。

部屋の主であろう男は、大柄な体を揺り椅子に沈め、無意識に小さくゆらしながら本に熱中しているようだ。

表紙はあくどそうな男二人がでかでかと描いてあるもので、児童向けの本のようだ。

男はぶつぶつとその部屋に不釣り合いの本を声に出して読んでいる。

 

「…お前の悪事はこの私がゆるさぬぞ。 なにを。おぬし。 …エチゴヤンは脂汗をぬぐった」

 

「…エチゴヤンとオーダイカンの黒い取引の全容が明らかになっていく…」

 

「…おまえは村人をさらい領主に売りつけていた。 それだけじゃない。 殺人、脱税…オーダイカンの裏は取ってある。言い逃れはできないぞ…」

 

「エチゴヤンは様々な悪事を裁かれることとなる…」

 

そこまで読んで、男は本を投げ捨てた。顔がにいっと歪む。

 

「裁かれる。…ククク、馬鹿な奴だな」

 

男が笑っていると、ノックの音が聞こえた。入ってきたのはメイドだ。

 

「お客様がいらっしゃっております」

「客間に通せ。茶を運んだら下がっていろ」

「かしこまりました」

 

男は軽く身なりを整えると客間へ向かった。

客間では既に客人と思しき男がソファに座り優雅にお茶を飲んでいた。

男は客人に近づき挨拶した。

 

「これはこれはご機嫌いかがか」

「機嫌取りはいい。…どうなんだ?」

 

ゆっったりとソファに腰掛ける男。

客人は眉をひそめせかした。その様子を焦りととらえたのか、男は大げさに手を広げ、ことさら余裕そうに言った。

 

「万事順調ですよ。向こうもこちらを取り立ててくれる」

「あまり調子に乗るな。最後の詰めを見誤るなよ」

「大丈夫ですよ。それにまだ先の話でしょう」

「…ぬかるな」

「心配症ですね。まだこちらが動くほど、事態は進行してません。今は向こうの要求に従ってればいいんです」

「そうだな」

 

そこまでいって、二人はどちらともなくお茶を口に含む。

男はきらりと目を光らせ、一番の障害になるであろう人物たちを思い浮かべる。

 

「それよりあいつらの方は平気なんですか?」

「わからぬ。確かに侮れない部分もあるが…」

「でも結局若造どもの寄せ集めですから。あなたなら何とでもいえるでしょう」

「そうだな。だが、当分は関与せず泳がせるつもりでいる」

「はあ。珍しいですね。あなたがそんなことするなんて」

「王のことがある。下手に動いて疑いをもたれるのは困る。それにあやつらの力量をみてみたい」

「すき物ですねぇ」

「何とでもいえ」

 

客人の言葉に男は肩をすくめ、思い出したように言った。

 

「ところで、今日のご用件は」

「ああ。実は今日、リテリウムの西、ワンノウェイトの件が出てな」

「そうですか。あそこは当分使えませんねぇ・・・」

「だから言っただろう。同じ場所ばかり使うとやりにくくなると」

「はいはい。でも平気ですよ。こちらに足がつくことはありません」

「あたりまえだ」

「いやいや。手厳しいですね」

「この計画が成功するためにはミスはゆるされぬ。 …もう帰る」

「もうお帰りですか」

「ああ。馬車を出させろ」

「わかりました。良い夢を」

 

男はメイドを呼びつけ、お帰りだ、とだけ言った。

メイドはすぐさま馬車の手配をしに出ていった。

 

そして二人の男は別れた。

 

第17話へ

2章目次へ

ランキング(NEWVEL投票ランキング)
気に入っていただけた方、クリックお願いします♪
(ひと月ごとリセット)

 

一言:リアル黒い取引…してない。

でもアヤしい。

きっと当分更新できなくなるから今のうちにがんばる!

よろしければ感想待ってます♪誤字脱字等の指摘もお願いします。