メイギカ 第2章 第17話 〜メイギカへの道〜
ジンと別れてから、何日が過ぎた。
彼を信じ、さしてくれた方向に向かってひたすらに歩を進めている。
彼がくれた小瓶はほとんど空になっていた。
あとどれくらいで着くのだろうか。
はやる気持ちはあるが、きっと着くという確信をもっているせいか、一歩一歩が夢に近づいているみたいだった。
今までのどの道のりと比べても、心穏やかに進めてきていると思う。
遙は小瓶をぎゅっと握りしめた。
これがあると安心できる。
ジンの言っていた通り、大したモンスターにも会わず、山賊に出くわすこともなかった。
とっても順調だ。
メイギカにも、きっとすぐ着くだろう。
満月の夜。
今日はここで休もうと、大きな木の根元に横になった。
自分の近くに最後の粉をまく。明日からどうしようかとちょっと心配になるが、きっと何とかなるさと思い直した。
今日は結構進んだはず…。
疲れていたので、すぐ眠りに落ちた。
遙は、背中に何か当たった感触で目を覚ました。まだ真っ暗闇で、眠ってしまってからどれくらい経ってしまったのかはわからない。
寝ぼけた頭で必死に当たりの状況を探る。
ふっと上を見上げた遙は驚愕した。自分の寄りかかっていた木が蠢いている!
あわてて起き上がると、ゆっくりあとじさる。
よく見ると木の二つのくぼみがまるで目のように淡く光っている。
この木、モンスター!?
じりじりと下がると、後ろからうなり声が聞こえた。
振り向くと、そこには2頭のウルフがよだれを垂らしている。
2頭は遙に時折視線を走らせてくるが、近寄ってこようとはしない。
どうやらウルフはこの木のモンスターとにらみ合っているらしい。
おそらく、遙をめぐって。
どれくらいにらみ合いが続いていたのか。
遙もうかつに動けなかった。動いたらどちらかから襲われそうな気がして。
空が白んできたようだ。
いつまでこうしていなくてはいけないのだろうか。何とかスキをついて逃げ出したい。
グルルル・・・というウルフのうなり声がやんだ。
くる!!
とっさに逃げようとしたが、足場が悪く躓いてしまった。
しまった!!そう思い目を閉じた。
きゃいん!
ウルフの悲痛な叫びを耳にし、恐る恐る目を開けると、木の枝でたたきつけられたらしいウルフに、もう一頭が駆け寄っていた。
2頭は尻尾をまいて逃げ出した。
遙は思わず、木のモンスターを見上げてつぶやいた。
「…助けてくれたの?」
木のモンスターは返事の代わりに、ただの木へと戻っていた。
「ありがとう・・・」
我らの務めは常に主を守ることだ…
風に乗って、そんな声が聞こえた気がした。
「さって!今日中につく勢いで頑張らないと!」
遙は自分を励ますように口に出すと、立ち上がり歩き出した。
すっかり日も昇りきった中、それでも薄暗い森の中を進んでいく。
途中休憩をとり、そこらへんになっている果実をもいで食べていると、ガサリと音がした。
一瞬にして緊張する。
近くの木に隠れながら様子をうかがおうとすると、女性の声が聞こえた。
「そこに誰かいるの?」
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一言:やっと人間の登場ですな。