メイギカ 第2章 第18話 〜メイギカに到着!〜

 

「そこに誰かいるの?」

 

人だ。

遙はそう思った。とたんに緊張を帯び早くなる心拍を感じながら、そっと声のする方を覗く。

 

ウエーブのかかった亜麻色の髪。ほっそりとしたスレンダー美女だ。

女性と目が合った。

 

「…あなた誰?」

「えと…」

「まあ、とりあえずこっち来なさいな。大丈夫、襲ったりしないから」

「あ、はい…」

 

女性はにっこり笑って手招きしてきた。

一瞬戸惑ったが、ここにいても何も始まらない。意を決して彼女のもとへ向かった。

 

 

年齢不詳のこの女性について行きながら、彼女にいろんなことを聞いた。

彼女の名は耀 来夜(よう らいや)。やっぱり年齢は不詳。それとなく聞いたがかわされた。

願った通りメイギカの国民で魔人だそうだ。

彼女はここへ木の実採集に来ていた。

 

森の中を彼女について進みながら遙もこれまでのことを話した。

仮面の男のくだりでは、来夜はジンを知っているといった。

遙がジンという変な薬屋さんに助けてもらったというと、

 

「仁に会ったの。…あの子は確かに変な薬屋よねー」

 

と言って来夜は笑っていた。

あの子と言っているが、どういう知り合いなんだろう。

 

ジンについては、あと「すぐ会えるわよ」と言っただけだった。

 

森の景色が少し変わって、木々が減ってきた。草原が隙間からうっすら見える。

 

 

「メイギカまで、あとどれくらいなんですか?」

「あら。もうとっくにメイギカよ」

「ええっ!」

 

どうやら来夜と会ったところはもうすでにメイギカだったそうだ。

ミディールとの境は森の中のためはっきりしていないが、結構前からメイギカに入っていたらしい。

少し驚きはしたが、一安心だ。

 

 

草原に出て進む。ちらほら家らしきものも見えてきた。

町の入り口に着く。

 

大きな門があり、そこには二人の兵士が立っていた。

それも、とてつもなく大きい。巨人だ。

 

来夜は特におびえることもなく兵士に話しかけた。

 

「あけて頂戴」

「リョウカイシマシタ。オカエリナサイ」

巨人が大きな門の扉を押して開ける。

 

来夜が振り向いた。

 

「ポケっとしてないの。いくわよ」

 

二人が入ると大きな音をたてて扉は閉められた。

 

門の中は町そのもの。家々が立ち並び、人々が行きかっている。

来夜はその町の中をずんずん進んでいく。

遙はきょろきょろと見回し、人々にぶつかりながらついていった。

 

町並みはいたって普通だ。はじめは石造りの家々が並んでいたが、木の家が増えていく。

それについて訊くと、町の周りは石の家でできており、中心はほとんど木の家だそう。

これはモンスター対策らしく、門があるのもモンスターが入ってこないようにとのこと。

 

町の人も不思議だった。普通の人間もいるが、そうでない人もたくさんいた。ジンに聞いた通りだ。

一見人間でも、体の大きさが大きかったり小さかったり、耳が明らかにとがっていたり、肌の色が違っていたり、背中に羽が生えていたり。

人間には見えないものも多種多様だ。鳥、獣、虫…

そんな住民が歩き回っている。見ているだけで楽しい。

中には来夜に声をかける者たちもいた。

 

「来夜さーん!今日は飲みに行くから待っててくれなー!」

「ママー!今日も綺麗だよ〜」

「わしとデートしてくれ!」

「来夜ー。今度お茶しましょー」

「今日ダンナ行くって言ってたからよろしくね〜」

 

「あたし、宿兼酒場を経営してるのよ」

来夜は言う。

だからママと呼ばれているのか。遙は酒場にいる人もママと呼ぶのかわからなかったがとりあえず納得した。

ただ不思議なのは来夜に声をかけるのが老若男女問わずで、種族もついでにかかわらないあらゆる人々ということだった。

まあ若干中年の男性の比率が高いが。

 

「来夜さんて、人気者ですね」

「うふっ。まあねー」

 

町の中を結構進んできていた来夜は、少し人通りが途切れた一角にある家の前で止まった。

 

「ここがあたしの家。とりあえず今日は泊まっていきなさい」

「え?…いいんですか?」

「いいわよ。あそこで会ったのも何かの縁と思ってね」

「あ、ありがとうございます!」

「まぁ、とりあえず今日はねー。そのあとどうするかはわからないわよ」

「いえ。今日泊めていただけるだけでもありがたいです」

「ふふっ。とりあえず2階の部屋を使いなさい。今日は宿泊の人はまだいないから好きなところ使っていいわよ」

 

来夜はそう言って妖艶にほほ笑んだ。

遙はもう一度お礼を言い、はじの一部屋を使わせてもらうことにした。

 

遙はご飯まで食べさせてもらい、お風呂にも入り久しぶりにさっぱりした気持ちで柔らかい布団に入った。

 

こんなによくしてもらって悪いなぁ…と思いながらも、この気持ちよさからは逃れられそうになかった。

 

下からは酒場で盛り上がっている声が小さく聞こえてくる。

その声を聞きながらすぐ眠りについた。

 

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一言:年齢不詳の美女でした。

さてこの人は結局何者か。