メイギカ 第2章 第19話 〜謎の影〜
遙はぐっすり眠っていた。
来夜の宿の2階、突き当りのひと部屋。
月明かりが薄くさす窓辺に、すやすやと眠る彼女の寝顔が浮かび上がる。
小さな風音がして、月明かりが雲に隠れた。
「ん・・・」
遙はふと眼を覚ました。
先ほどまで気持ちよく寝ていたはずなのだがなぜか目が覚めてしまい、遙は仕方なく上体を起こし窓の外を見た。
外は寝る前は晴れてよく星も見えたほどだったが今は曇り、月明かりもおぼろげの暗闇だ。
「まだ真夜中じゃない…早く寝すぎたかなー。いいや、もっかい寝よ」
独り言を言い、また布団にもぐりこむと、目をつぶって眠ろうとした。
しかし。
(なに…この感じ)
何かの気配を感じる。
遙はもう一度起き上がり、辺りを見渡した。
(特に、何もいないよねぇ・・・)
その時、一瞬雲が途切れ、窓から月の光が差し込んだ。
「え…?」
ふっと見た部屋の壁に映っていたのは、大きな影だった。
それも、まるで怪物が大口を開けて襲いかからろうとしているかのような。
はっとして思わず布団を引きよせ窓辺によりかかる。
再び月は雲に隠れ、闇にのまれていく。
その瞬間、遙に向かい何かが飛んできた。
あわててかわしたが、頬にチリと痛みが走った。
「な、なんなの…!」
急いでベッドサイドにあるランプをつける。
へやが淡い光に照らされた。その光に一瞬安堵したものの、部屋の隅に素早く動く小さな影を見つけまた緊張する。
どうするか。
油断なく部屋の隅の影を気にしながら、遙はベッドから降りた。
そこに再び影が襲いかかる。
遙はよけた拍子に転び、部屋のドアの近くに転がった。
影はどこか。
影は窓辺にぼんやり浮かんでいた。遙が動けずにいると、影は徐々にはじめに見た時のように大きくなっていく。あっという間に化け物サイズへと膨らんだ。
遙はその様子を見てパニックに陥った。
あわててそばのドアにすがりつきどんどんと叩く。夜中だとかは彼女の頭にはなかった。ひたすら叩き助けを求める。
「ら…来夜さんッ!!なんか変なのが…助けて!!」
どんなに叩いても返事はなかった。寝ているのか。
「ああ…来夜さんっ!!誰かっ!!」
シュッ!!
ほとんど条件反射で転がりながらもよけた。すぐに立ち上がる。
また小さくなったらしい影は遙がさっきまでたたいていたドアにめり込んでいる。
「え…?」
めり込んだ影がポロリと落ちる。焦げた跡からはうっすら煙が上がっていた。
しかし、煙が消えた後は何事もなかったかようにもとの状態に戻った。
(どうなってるの!?木のドアなのに!)
遙は落ち着こうと深呼吸をしながら考える。
とにかく、この影をどうにかしなければ。
だが、どうすればいいのか。
遙には武器はない。あるとしたら木の実ナイフぐらいだ。
魔法だってロクに使えない。ジンに教わったものは広範囲の呪文でこんな狭いところでは使えない。
遙は必死でジンに教わったことを思い出そうとした。
あの時はどうやったら魔法を使えたんだろう。どうにか応用することはできないか…
『魔力とは精霊たちへ意思を伝える力。強く念じれば彼らは応えてくれる』
そうか、意思を伝える…
やってみるしかない。
遙は冷や汗をぬぐい、精霊に伝わるようにと願った。
「お願い…精霊よ!私を助けて!!」
同時に影が飛びかかってくる。
遙はギュッと目を閉じた。
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一言:武器なしでよくぞ旅なんかできたな…汗
よし、途中で失くしたことにしよう♪(嘘)…すいません。
なぜだか影とのバトル長いです。別に戦闘が好きなわけじゃないです。ひっぱってみただけです。笑 ていうか思ってたより長くなっちまったので…