メイギカ 第2章 第21話 〜昨夜の真相〜

 

目まぐるしくいろんなことが起こりすぎて、頭がパンクしそう。

 

そんなことを思いながら朝ごはんを食べている遙。

ここは来夜の店の店内。遙が食べているテーブルは綺麗に片付いている。

でもそのほかのテーブルは全く昨日のままで、ごちゃごちゃしたまんま。

 

遙の前では来夜が鼻歌を歌いながら大量の皿やグラスを洗っていた。

と言っても、シンクがあって洗剤をつけて水洗い…して洗っているのではない。

洗いものはテーブルにのったそのまま。

来夜がそれを指でなぞるだけで、水しぶきとともに汚れが飛んでいく。

飛んだしぶきは空中でまとまり、放物線を描いてすみに置いてあるバケツに溜まっていった。

 

遙はそれを見ながら出してもらったご飯を食べている。

 

昨日のことなんかも聞きたいのだが、「まぁとりあえずご飯でも食べなさいよ。お腹すいたでしょー?」と笑顔で言われそれ以上聞けず、仕方なくご飯を頂いているのだった。

だがこの調子じゃ食べ終わっても聞けそうにない。

 

食べ終えた遙は、どうしようかと思案する。

 

来夜は皿洗いを終え、片づけに入って奥の部屋へといなくなっていた。

 

遙も来夜の真似をして、落ちろっ!!となぞってみたが変化はなかった。

なんだかがっかりして指についたものをなめていると、来夜が戻ってきた。

 

「来夜さん!」 

「ハイハイ。おまたせー」

 

来夜はそう言って遙の皿もすいっとなぞった。汚れが飛んでいく。

 

「よーく見ときなさいよ。とりあえず最初のノルマはこれができるようになることだからね」

「あ、はい…それであの、いろいろ聞きたいんですけど」

「ん?ああ、ちょっと待って。これもしまってくるから」

 

また来夜は奥に行ってしまったが、すぐもどってきた。

ポットを持っており、カップを並べお茶を注ぐ。

 

遙の前に座り、ゆっくりカップを傾けてから来夜は言った。

 

「さて、何から聞きたい?」

 

 

遙は昨日の影のことを聞いた。

あの影は精霊族で、カゲボウシという種族だという。

伏せられた帽子の中など、常に影となっている場所に住んでいる。

明るい場所では活動できないが、暗くなると動き出す。

 

「昨日はあたしが頼んだのよ。あんたを襲ってちょうだいって」

 

来夜はにっこり笑ってとんでもないことを言った。

 

「えーっ!?…なんでそんな」

「そりゃあんたの力を試すために決まってるでしょー?」

 

来夜の言うには真相はこうだ。

 

来夜は遙の魔力を試すため、遙が寝ている間に部屋を魔法で包み込み隔離した。

そして帽子に住むカゲボウシに頼み込み、遙を襲わせた。

その様子を見ていた来夜は遙を自分が教えるに合格ラインと決めたらしい。

 

「私が非魔人だったらどうするつもりだったんですか!」

「やーねー。あたしがそんな見つくろい間違えると思って?」

「…じゃぁ何で襲わせたんですか!」

 

本当に怖かったのに。そう思って抗議すると、来夜はとりなすように微笑み、まぁまぁとなだめた。

来夜は、「本当はねー、仁が名乗ったみたいだから気になったのよ」といった。

 

「どういうことですか?」

 

遙はジンのことを思い出しながら言った。

確かに最初は名乗ろうとしてなかったけど、でもそれは結構慌ただしかったからだろうし…。

 

「だってあの子が助けてメイギカ来た魔人の子で、仁の名前知ってた子なんて今までいなかったもの」

「そうなんですか?」

 

そんなにめったに名乗らない人だったんだ。

でも私にはちゃんと名前を言ってくれた。

その理由はわからない。でもなんだか嬉しくなってしまう。ジンに認められたみたいで。

 

「で、でもそれでどうしてあーゆーことになるんです?」

「仁が名乗るほどだからすごいのかと思って」

「そんな理由ですかぁ〜…」

「うん。でもあたしも全く見つくろってなかったわけじゃないわよ。魔法の才を見抜くのは得意なんだから★」

「そんな笑顔で言われても…ひどい目に逢いましたよ」

「いいじゃなーい。あんただって住む家見つかってよかったでしょ。それにこの私に教われるなんて幸せよ〜」

「まぁ、それは本当にありがたいです。がんばります!…でも、来夜さんって魔法の先生だったんですね。カッコいい・・・」

「あら、わかってるじゃなーい。うふふふ」

 

尊敬のキラキラとしたまなざしで見られ、来夜はにんまりとした。

遙の母は魔法をいくつか扱えるのにもかかわらず教え方が天才的にへたくそだった。

だから遙は魔人のくせに魔法が全く扱えなかったのだ。

これで魔力が暴走することもなくなるだろう。

 

「私、精いっぱい頑張りますっ!!」

「うん。もちろん仕事してね」

「…へ?」

 

キラキラを通りこしギラギラと目をギラつかせせながら全身でやる気をアピールする遙に、にっこりと来夜は言い放ったのだった。

 

「じゃー手始めに、部屋全部、掃除よろしく♪」

 

さっそく魔法の勉強をすると思っていた遙は仕方なく掃除をえんえんとやったのであった。

なんか理不尽…

 

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一言:まだいろいろなぞな部分も…?あるかなー?ないかなー?