メイギカ 第2章 第25話 〜二日酔い来夜先生の合宿?・・・〜

 

次の日。

気持ちよく目覚めた遙は、いつものように食堂の掃除やら玄関の掃除やら、もはや日課となった作業を終え、ふぅっと一息ついていた。

昨日はあの後、つまみを食べながら来夜はかなり酒を飲み、へべれけになったところで解散となった。

客人の4人は、寝出した来夜を運んだり、後片付けも手伝ってくれてかなりありがたかった。

遙はもう少し皇羽と話してみたかったのだが、皇羽は割と無口で、話すタイミングがつかめなく話すことはなかった。

ほぼ晴か紫穏が話し、永遠が突っ込み、皇羽がコメントするというローテーションが崩れることはなく、遙は質問に答えるぐらいだった。

でも、彼らの話はよくわからないなりに面白く、遙は結構楽しんでいた。

 

(昨日は楽しかったな)

 

もともと大勢でわいわいやるということがはじめてぐらいなので、こういった小さな飲み会であっても参加しているだけで楽しく感じるのだ。

遙は水を飲みながら昨日のことを思い返していた。

 

ジンにそっくりな王子・皇羽。

明るく話しかけてくれる親切な晴。

いろんなことを教えてくれた学者の紫穏。

クールで突っ込みが冴える永遠。

またすぐ会えるといい。そう思った。

 

 

「そいえば来夜さんは?」

 

いつもなら遙が日課をこなしているうちにいつの間にかご飯をつくっているはずなのだが。

まだ寝ているのだろうか。

遙はそう思った。彼女は二日酔いという症状を知らないのである。

 

でももう起こした方がいいだろう、遙はそう判断して来夜の部屋へ向かった。

とんでもない光景が待っているとも知らずに…

 

 

「来夜さーん、起きてますかー?」

 

返事がない。もう一度ノックしてみる。

反応がない。

 

「来夜さん?入りますよ」

 

昨日ドアに鍵をかけられなかったのでドアは普通に開いた。

昨晩来夜を運んだ時はいなかったので、遙にとっては初の来夜の部屋である。

妙な興奮を覚えながらもそぉ〜っとドアを開け、中を覗き込んだ。

 

「・・・・・・・・」

 

言葉が出てこない。

こ、これは。

なんというか。

 

魔女の住む部屋…?

 

部屋は散らかっている。

今部屋のドアにいる遙から、来夜の寝ているベッドまで、様々な障害を乗り越えなければならない。

遙の目の前には、服やら帽子やらがどっさり積もっているエリアがある。

まあここまでは多少踏みながら何とか進むことができる。多少セクシーな下着が見えてどきりとするが。

しかしその次のエリアは恐ろしいことになっていた。

 

なぜかビンや皿、鍋が散乱している。いわゆるフラスコのようなものもある。何かの研究でもしているのだろうか。

鍋には何やらおどろおどろしい物体がこびりついてたりする。遙は見なかったことにした。

そしてそれもなんとか超えると、本が積みあがったエリアに到達する。そこをかきわけてやっと来夜の登場だ。

 

来夜の顔は真っ青。眼の下にはクマ。頬はこけ、唇はがさがさ。

いつもの年齢不詳の美女の面影はうっすら感じ取れるものの、なんだか全身で「あたし、死にそ」と表現しているかのようだ。

遙はそんな来夜の様子に驚いて叫んだ。

 

「ら、らいやさぁーん!!」

「う…」

「おきてください!」

 

遙が呼びかけると、来夜はうっすらと目を開け、死にそうな表情で唇をわなわなとふるわせ、うわごとのように言った。

何かを求めるようにプルプルと腕をこちらに伸ばしてくる。ちょっと怖い。

 

「み…み、ず……ゔ」

「来夜さん!?大丈夫ですか!?今水持ってきますっ!死なないでください!」

「ちょ、まって…なべ」

「鍋?」

 

遙は比較的きれいそうな鍋を発掘し渡した。来夜はそれを受け取ると、何とかよろよろと上体を起こし少しせき込んだ。

 

「平気ですか?」

「みず…お願い」

 

遙はなんとか部屋を出て、同じくらいの苦労をしてグラスの水を来夜へ運んだ。

来夜は水を受け取ると一気に流し込み、鍋を握りしめたまま充血した目で遙を見上げ頷いた。

 

「あたしは、平気だから、ちょっと、待ってて……うぷ!

 

ゼイゼイと息をしながらそこまで言って、来夜は口を押さえた。相変わらず鍋を握りしめている。

しばらくそのまま目を白黒させていたが、重々しくうなずき、ゆっくり顔をあげ、口をふさいでいない方の手で外を指さした。

 

「?」

「ほほ、へへへ」

「?」

「ほほ」

 

何かを察した遙ははっとして頷き、急いで部屋から出た。

ドアを思い切り閉めた向こう側から奇妙な爆音のような音がしたが、聞かなかったことにした。

 

 

それから1時間。遙は火をおこしておかゆを作り朝ごはんにした。

来夜の部屋のある上からはドタンバタンといろいろ何かが起こっている音がしたが、遙は辛抱強く待った。

 

 

「遙〜おはー♪寝坊しちゃってごめんねぇ」

「・・・・・・・・・・。 いいえ♪おかゆあるんですけどあっためますか?」

「あら、ありがとー。じゃ、お願いね〜。顔洗ってくるからー」

 

来夜は普通に戻った。完全なる来夜だ。

遙はさっきの死にかけ来夜は夢だったと忘れることにした。

自分は偉いなと思った。

部屋のこと聞きたかったけど我慢した。

自分は偉いなと思った。

 

 

 

「それじゃー今日は合宿だったわねぇ」

「合宿って…?」

 

「もちろん、勉強合宿です!!」

「あっ、ハイ!!」

 

来夜の一声で、なぜか昨日ぶりの晴と永遠が連れ立ってやってきた。

 

「ンで俺が…」

「ちわ〜。耀ちゃん平気だった?」

「…。女性にそういうこと聞くもんじゃありませんッ!!」

 

聞かなくて良かった。

 

「なんで俺らを呼んだんすか?」

「あたしは今日の仕込みをするから〜」

「…だから何?」

 

「ん?ま、頑張って」

「はァ?」

 

プチ切れしそうな永遠に、来夜のことをよくわかっているらしい晴と、なんだかわかってきた遙はやっぱりなと思ったのだった。

 

「まぁトワ君。落ち着きたまえよ。我らが師は、勝手にやってくれと言っているのだよ」

「は?」

「あたし仕込みながら補足したりするからー」

「で何で呼ばれたの、俺ら」

「たぶん合宿って言う名前だから人が欲しかったんじゃないかと」

「はァ?」

「ぽんぴーん、さすがはわが弟子たちよ♪その調子で頑張って」

 

こうしてどこまでも投げやりなのかどうなのか真意の読めない来夜が今日の仕込みをする近くでの『勉強合宿』が始まった…。

 

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一言:二日酔い来夜さん。結構無駄ですね。

ほほ、へへへ=そと、でてて

次からみんなで魔法のおべんきょ♪