メイギカ 第2章 第26話 〜勉強しましょー〜

 

気づけば晴による魔法講座が始まっていた。

 

「おはようございまーす」

「ざいまーす」

「えー1時間目は座学です。ついでにたぶん今日はずっと座学です。トワ君はきっちり復習しましょう」

「永遠さんだけですか?私は復習しなくても??」

「いやいやお嬢さん、彼はもう魔法学校で習ってるはずなので、これを機にちゃんと覚えているか確かめようって寸法ですよ」

「ははぁ、なるほど」

「…;」

 

来夜の鼻歌を遠くに聞きつつ、若干自信がなさそうな永遠と絶対楽しんでる晴、そしてワクワクで目を輝かせる遙たちは、さっそく勉強を開始した。

 

「じゃあさっそくトワ君。基本中の基本。魔人のタイプを答えなさい」

「え、たいぷ?…えーっと、はつどう…型。能力型…特殊?」

「まあ、自信がなさそうなのはいいとしてとりあえず正解です!」

 

晴の説明によると、タイプというのは魔人が魔力をどう使うことができるかの違いなんだそうだ。

発動型は魔力を魔法によって具現化させる、火とか出したりするようなことができるタイプ。魔法使いと言えばこれ。

能力型は、魔法を出すことはないが魔力を自分の能力として強化しているタイプ。ジンと前に会った宿の主人がそう。

特殊型は、簡単にいえばそれ以外。細分化して別名がついているのもあるが、少数なので一つにまとめられている。

基本的に魔人はどれかに属するが、訓練や才能などで二つのタイプを扱えることもある。

 

「特殊型ってどういうものですか?」

「おっ、いい質問だねぇ。じゃあトワ君どうぞ」

「何で俺が…」

 

ぶつくさ言いながらも永遠は説明してくれた。

晴と永遠は二人とも特殊型だ。晴はドラゴン使い。これは細分化すると「使役型」と呼ばれるそうで、別の生き物を従えることができる。

猛獣使いなどもこれに含まれるが、人形使いや死人使いなどは晴いわくこれには含まれないらしい。

永遠は剣士だ。剣に魔力を付加して使用することができるという。こういったモノに魔力を込めたりする能力を持つ者は「付加型」と呼ばれる。

先の人形使いなんかはこれに近い。他にもいろいろなタイプが存在する。

効果型…他人の体に影響を与える。例えば傷を治したりとか。 幻想型…幻をつくったりする。

基本的に一部の特殊型はほぼ先天的才能のため、訓練してもほとんどできるようにならない。

ただ特殊型が発動型のような魔法を使ったりすることはできる。なので二人とも魔法も扱える。

 

「まあ特殊型って言っても人が分けてるだけだし結構曖昧だよ。例えばドラゴンを眠らせる魔法があったとしたら、それは何に分類されると思う?」

「…うーん、効果型??」

「まあ一般的にはね。でもよく考えてみたら寝ろっている指令を与えたのかもしれない。使役型とも取れたりするでしょ」

「そうですね」

「そういうこと。つまりこれを覚えて分けたとしても大して意味はない。でもこうやって習うのにはそこそこだーいじな意味があったんだけど、トワ君?」

「また俺か…。自分のタイプを知ることで自分にあった訓練をする」

「もういっちょ!」

「も、もう一個?」


「魔人のこと知った気になる!勉強した気になる〜!!」

「ハイ耀ちゃん正解ッ!」

 

遠くから来夜が嬉しそうに叫んだ…やったー!

その様子を見てニコニコ笑う晴。遙と永遠は顔を見合せてため息をついた。多分同じこと思ってる。

 

「ま、というわけでたいした意味はないんだけど、導入としてはいいだろ?」

「はい、勉強した気になりました!きっと私は発動型ですねっ」

 

遙はジンに教わった魔法を思い出しながら言った。

 

「おお、そうかそうか。魔法使いの道は険しいぞ、頑張ろう!!」

「ハイッ!」

「はぁ。。。」

 

やる気のなさげな永遠を引きずって次のお勉強。

 

「はーい。次は何のお勉強しようかな」


「みんなお茶飲むー?」

「飲むー!」

 

来夜の持ってきてくれたお茶を飲みつつ休憩にした。

 

「じゃあ休憩がてら属性の話をしようか」

 

属性というのは備わっている性質のことを言うが、転じて魔人の属性と言うとその持っている魔力がどの精霊由来かということを言う。

たとえば火の魔法を得意とする魔人は、火の精霊からの影響を強く持ち、力をもらっているということになる。その人は火属性となる。

だがこれも基本的にはの話で、必ず一つの属性の精霊からの影響だけを受けるわけでなく、さまざまなものの影響を受けている人も多い。

たとえば永遠は、火属性が主だが地の精霊からの影響も受けている。

ちなみに言われている属性は8種あり、以前話に出た精霊教はこれら8種の教会をそれぞれの地域に構え信仰されているという。

なぜそれぞれ地域に分かれているかはよくわかっていないが、昔からその地域に多くいる精霊の影響でそこに生まれる人々にはその属性がつきやすいのではないかと言われている。

例をあげれば、南のほうに住む人々には火属性を持つ魔人が多く、火の信仰教会の本部がある、といったぐあいだ。

中央、首都のリテリウムには、すべての属性の教会支部が置かれ、魔法学校もあるそうである。ちなみに本格的な魔法を学べる魔法院はここにしかなく、各地域から優秀な魔法使いの卵が通ってきているそうだ。

属性を全てあげると、火、水、風、地、雷、冷、光、闇の8属だ。

 

「まあ属性によっていろいろ違いがあるんだけど、そこまではまだいいからまた今度にしよう」

「はい」

「ふぁー」

「寝るな!寝ると死ぬぞ!殺すぞ!」

「ヒッ、…休憩と思ってた」

「甘いな!」

 

晴と永遠の掛け合いは本当に面白い。けらけら笑っていると恨めしそうに見られて自重した。

 

ところで8つもある属性がすぐ分かる便利な方法があるという。

 

「遙ちゃんはー…」

 

じ〜。

顔をガン見され、思わず引いてしまった。

晴は若干ひきつると、がっかりしたようにもとの位置にもどり、言った。

 

「変に思わないでくれ、眼の色を見るとその人の主な属性が大体わかるんだ」

「へぇ〜!…えと、ゴメンナサイ」

「うん。ちょっと傷ついた」

「へへ・・・」

 

遙は改めて晴や永遠の眼を見てみた。晴は茶色、永遠は赤茶だ。自分のは鏡がないと見れないが、黄緑なのか緑なのか半端な色であまり好きじゃなかった。

この色で属性がわかるなんて。便利。

 

「風と雷が強く出てるね」

「そうなんですか」

「ちなみに俺は地。トワ君は火が強めの地かな」

「へぇぇ…」

 

属性の色わけは古くから言われてきており、現在でも瞳の色で得意属性の判別が行われている。

各地の精霊協会でも公式な色としてそれぞれの属性の色は式典に利用されているほどだ。

そういえば、と遙は思いだす。ジンに風と地の魔法を教わったけど風のほうが勢いがあったような気も…

 

「まぁ今出てきたのでいうと、風は緑。雷は黄色、地は茶で、火が赤ってわけ。何となくわかるでしょ?」

「確かに。じゃあ来夜さんは黄色だから雷?」

「そうそう」


「あたしは火もはいってるのー!」

「はいはい。…らしいよー」

「そうなんですかー!すごーい」


「でしょ〜。ふふっ」

「…はは」

 

来夜の主張に乗っておだててやる。まぁ火が入っているのは事実だしで認めてあげなくちゃね、と晴は小さく言った。

ここまで聞いて、遙はふと皇羽の瞳を思い出した。

綺麗な紫と水色。

 

「皇羽…王子さんはどうなるんです?」

 

皇羽さん、と言おうとして、王子様と呼んだ方がいいのかと思ったが結局微妙な呼び方になってしまった。

まぁ本人もかしこまるなと言っていたことだし許してもらおう。

 

「皇羽は珍しいよな、青みがかった紫と水色のオッドアイ」

「それじゃー再びトワ君に答えてもらいましょう!皇羽の主な属性はなにか」

「…水」

「はい、まあせいかーい」

「まあってなんだよ!」

「だってさー今色の話をしてるんだからさ、そこんとこ考えて発言してほしかったってゆーか」

「スイマセンネ!考えなしで」

「そんな怒らないでくださいよー」

 

すっかり機嫌を損ねてしまった永遠の代わりに晴が説明する。

 

「水色は冷属性だね。紫のほうはあんまりないよ。聖属性なんだけど青の水属性もまじってる。でも皇羽は冷よりも水のほうが得意みたい」

「そんなこともあるんですね。それより聖属性って…聖なる属性ですか」

「そう。でも今はほとんど見られない。聖属性の精霊も少ないし、聖属性の精霊協会ももうないしね」

「え?そんななくなっていいものなんですか」

「うーん。これについて説明するのはちょっと面倒なんだよな…トワ君!」

「ツーン」

 

永遠は効果音付きでそっぽを向いた。だが晴も負けてはいない。

 

「いいのかトワ君!君がここでそっぽ向いてたら、遙ちゃんが会って二日目にしてもうトワ君のことバカキャラと思っちゃうかもしれないぞ!」

「やだ、私そんなすぐきめつけたりしませんよ。それに大丈夫です。ちょっと答えられないくらいじゃ馬鹿とは言いません」

「・・・反対属性のことだろ!わかったよ、説明してやる」

 

晴のセリフに、遙としてはまじめに答えたつもりだったのだが、永遠は深読みしたらしい。

バッと顔をあげ、遙を睨んで説明を始めた。何で私が…

 

「反対属性って言うのは字の通り。反対の性質をもつ属性同士のことだ。火だったら冷、雷なら水、風なら地。こいつらはお互い拮抗してる。

これとは逆に、類似属性って言うのもある。火と雷、水と冷。地と風にはないけど、広い意味でとらえれば風は火と雷のグループで地は水と冷に入ることになってる。

こいつらもグループで対になってるんだ。つまり広い意味じゃ火・雷・風と水・冷・地が反対属性になる」

「はい、素晴らしい。じゃぁついでに何で聖属性がないかも説明してあげてください」

 

遙は眼光鋭く睨まれていたせいで質問を逃した。何で私睨まれてるんだろう。

仲良くしたいのに、怒っちゃったかな?

もともと眼力がある永遠なので睨まれると結構怖い。

 

「聖属性がないのは、その反対属性で邪、つまり邪な属性って言うのもあったんだ。

でもこいつらはさっきも言ってた通り少数だし、邪属性のイメージも悪くて信仰者が排除される傾向にあった。だから反対属性の聖とともになくなったってわけさ」

「そうなんですか!よくわかりました。すごいですね!」

「…まあな。でも、俺はおだてには乗らないぜ」

「いや、おだててるつもりじゃ…」

 

遙はがっくりと肩を落とした。来夜をおだてすぎたみたいだ。素直な賛辞のつもりだったのだがやっぱり永遠がひねくれたとらえ方をする。

そんな遙の様子を見て永遠がうろたえ、晴がはやし立てる。

 

「トワ君ひどーい。遙ちゃんカーワイソ。よしよし、そう落ち込むな」

「だ、大丈夫です。怒らないで」

「わ、悪い。怒ってるわけじゃなくってさ」

 

永遠は頭をポリポリ掻きながらしどろもどろになっていった。彼も女の子の扱いには慣れてないらしい。

晴はその点誰に対しても気さくに話せるタイプだ。

 

「怒ってないですか」

「怒ってねえよ…」

 

もうどうにでもなれと言ったように投げやりに頭を振って否定する。

遙はほっとして、気になっていたことを聞こうと口を開いた。

 

「怒ってないなら良かった。あの、反対属性って拮抗してるんですよね?それなのにたとえば永遠さんは反対属性が主な属性になってるのは変じゃないですか?

体の中がおかしくなったりしないんですか?」

 

拮抗しすぎて爆発したりとか。まさか…

自分で考えて恐ろしくなった。

 

「まさか、平気だぜ。…じゃー晴センセ、教えてあげて下さいよ」

 

今度は永遠の逆襲だ。遙はそう思ったが晴は普通にこたえる。

 

「お互い拮抗してるって言ったよね。でもこの問題は人間を深ーくほりさげて考えることなんだよね」

「はぁ。ふかーく」

「じゃあここで逆に質問です。あなたはいい人ですか、悪い人ですか」

「え…?わ、わかりません。いい人と思いたいですけど…」

「はい、素直でよろしい。まあみんな誰しもいい心、悪い心を持って生きているのです…!」

 

晴は立ち上がり両手を大きく広げ、大げさな動きで心臓に手でハートを作った。

そして無駄に一回転すると、ビシッと生徒二人を指でさし、芝居ががった言い方できっぱりと言った。

 

「そう。人間というのは常に矛盾した存在なのでございます!」

「…特にお前がな」

「はい、模範回答ありがと」

「イヤミかッ」

 

ぼそっと言った永遠の捕捉に突っ込みも忘れない晴。

遙は何となく納得した気分にはなった。晴の言い方が面白くて笑ってしまったけど。

 

「まあというわけでだ。魔人に限り、そういった反対属性が現れることがままある。

もちろん俺みたいに出ない魔人もいるけどそいつが矛盾のない完全体ってわけじゃないよ」

「魔人に限りって、精霊族さんはそうじゃないんですか?」

「精霊族さんはねーあたしたちよりずっと精霊に近い存在なの。だから力を受ける精霊も結構限られているの。

でもその代りあたしたちよりずーっと精霊の力を引き出しやすいのよ」

「おお!耀ちゃんいつの間に」

「ふふふ。あたしをなめないことねーさっきから聞いてたわ。合格よ!」

「やったー!何で合格か意味わかんないけどなー」

 

来夜の乱入によりうやむやとなったが、とりあえず精霊族に反対属性を持つ者はほぼいないということらしい。

 

「そろそろ休憩よ。ご飯にしましょ」

 

みんなで楽しくご飯を頂きました。うん。あたまを使った後のご飯はおいしいね。

 

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一言:こういう説明話って嫌い…

あとから矛盾しそうで怖いから。

久しぶりの長話です。進んでないけど。まあ気長に行きましょう。