メイギカ 第2章 第27話 〜遙と永遠〜

 

ご飯休憩の後はやっぱり座学。

みっちり?というかほとんど晴と永遠の掛け合いによって授業は進められていった。

いつの間にか(いつものことだけど)来夜は仕事しにどこかへ消えた。

 

「いやぁ、もう夕暮れ時だね」

「たそがれー…」

「きれいな夕焼けですね」

 

勉強した気満々の3人は窓から差し込む夕日を満ち足りた表情で眺める。

窓の外には赤く輝く街並み。

 

「今日はこの辺にしとこうかー」

「はい。今日はありがとうございました。二人のおかげで大分賢くなりましたよ!

なんか今すぐ魔法が使えそうです」

「いやぁそれほどでも」

「俺もいろんなこと思い出せて助かった。サンキュ」

 

遙はうーんと伸びをして、立ち上がる。

 

「お茶入れますよ」

 

遙の入れたお茶で3人は一息つくと、夕日を見つめながら話し合った。

 

「今日はほんとに、一日中付き合ってくれてありがとうございました」

「いやいや。今日楽しかったし」

「お仕事とかは今日はなかったんですか?」

「んー。まぁ俺らのボスが行ってこいって。な?」

「皇羽さんですか」

「ん。そう」

 

遙は昨日の皇羽の事を思い出す。

永遠とはまた違った意味でクールな人だった。

そこで遙は思う。

この人たちはジンのことを知らないだろうか。

来夜はジンのことを知っている。だったら彼らも知っているかもしれない。

遙は聞いてみることにした。

 

「あの、仁さんてご存知ですか」

 

遙の質問に、晴と永遠は互いに顔を見合わせる。

遙には何か二人が目くばせしたように思ったが気づかないふりをした。

ちょっとの間の後、話しだしたのは晴だった。

 

「…ああ、ジン。知ってるよ。仮面付けてる薬屋でしょ」

「知ってるんですね。二人とも」

「まぁね」

 

永遠も頷く。あの目くばせのようなものはなんだったんだろう。

私に何か隠してる?

 

「仁さんて…もうメイギカに戻ってるんですか」

「戻ってるよ。だーいじょうぶ。ここらへんもたまに来るし、近いうちに会えるよ」

 

晴はそう言って笑った。

遙は腑に落ちない点もあったが、まあいつか分かることだろうと思い返した。

すぐに会えると聞き遙は嬉しくなる。

 

「ふわー」

 

永遠があくびした。

つられて遙もあくびをする。

眼尻にうっすら涙を浮かべた永遠と目が合った。

思わず笑ってしまう。

 

「笑うなよ。お前だって目がうるんでるぞ」

「あ、ごめんなさーい。…眠くなってきましたねー」

「耀ちゃん遅いねー」

「そうですね」

 

大分暗くなってきたので、遙は食堂の明かりをつけにいった。

もう少ししたら開店の時間なのだが来夜はまだ戻らない。

話し声がするので玄関のほうを見に行くと、店の前の道で来夜は近所に住むおばちゃんと立ち話をしていた。

 

「来夜さん近所の方と立ち話してます」

 

遙がそう報告すると、晴が立ち上がる。

 

「マジか。俺ちょっくら行ってくるわ。近所の方って湖院さんでしょ」

「あ、そうです」

 

湖院さんというのは店の近所に住む野菜屋さんのおばちゃんだ。

よく来夜の店に来るし、野菜をくれたりする。遙も知り合いの気のいいおばちゃんである。

 

「俺こないだ湖院さんに野菜おまけしてもらったからお礼をしにね」

 

そういって晴は出て行った。バタンと言うドアの音の後に、晴の声が聞こえてくる。

永遠と二人になった遙は若干気まずい空気を感じた。

今までは晴がしゃべってくれたため二人も話しやすかったが、二人になると何を話していいかよくわからなくなる。

遙は頭をめぐらせ、ふと気になっていたことを聞いてみることにした。

 

「あのー。間違ってたらすごい申し訳ないんですけど。もしかして永遠さんってメイギカ出身じゃないんですか?」

「…ああ、まあね」

「あっそうなんですか。なんかメイギカンパイとか変なじゃんけんとか、永遠さんだけ普通だったので」

 

ちなみに変なじゃんけんについては晴が力説した。

『あれをするとね、じゃんけんの神が下りてくるんだよ!勝ちたい意思が強けりゃ強いほど勝てる手を教えてくれるのさ』

でも実際は永遠が勝ったと突っ込むと、そんな時もあると一掃された。


遙の言葉に、永遠は頷いてぽつぽつ話しだした。

 

「察しの通り俺はメイギカ出身じゃない。…ラグシっていう国に住んでた。今はもうラグシはないけど」

「今はもうない…」

「ああ。ラグシはメイギカの南よりにある、スレザルグリーフという国の奥にあった。

…まあ国名はともかくとして、別の国に攻め滅ぼされた。まあ国が変わろうがどうなろうか俺らにたいして変わりはなかったけど」

「私も、そんなことがありました。実際に戦火を見たわけじゃないんですけど…」

「まあ、メイギカ以外の国はしのぎを削ってるからな。仕方ねーよ」

 

端の村での出来事を思い出す。

非魔人たちは魔人の国に手を出せない。

だから非魔人同士で争いあうのだ。遙は母親にそう教わった。

でも今までのことを考えると、非魔人たちは魔人たちと戦おうとしているように感じる。

 

「永遠さんのいたところは魔人はいたんですか?」

「ああ、ほとんどがね。って言っても小さな村だったけど」

「迫害とかは…?」

「俺のいた村はかなり山奥にある。モンスターも多いし、非魔人はまず入ってこれない」

「そうなんですか…」

 

それならどうして彼は故郷を離れ、メイギカにやってきたのだろう。

遙のようにメイギカまで逃げてくる理由はなかったはずだ。

遙の疑問に気がついたのか、永遠は昔を思い出すように目を閉じた。

 

「何でメイギカに来たか。…それはまあ、簡単にいえば皇羽についてきたってことだな」

「皇羽さんについてきた…んですか」

「まあ詳しい話は今度だな。それよりお前、俺にそんな丁寧に話さなくてもいんだぜ?

同い年なんだし」

「え。でも永遠さん皇羽王子さんの付き人なんですよね?」

 

皇羽本人がそう言ってたはずだ。晴と永遠は付き人だと。

 

「それは俺が勝手に言ってるだけで公式には付き人は晴だけだよ。

だから俺は王宮には入れない。王宮から出た時が俺の仕事」

「そ、そうなんですか」

「だから身分的にはお前と一緒」

「そ、そっか」

 

なんだか丁寧に話す様な人とばかり会っていたから慣れない。

でも砕けた話し方で話した方がずっと打ち解けられる気がする。

遙達は来夜たちが戻ってくるまでいろんなことを話し続けた。

 

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一言:永遠と絡ませてみました。

ちなみに年齢は永遠は同い年と言っていますが、学年的には遙がいっこ上です。

さあさ、説明ゾーンを終えたらサクサクいけるかな?