#1 新入生は美少年!

 

春風そよ吹くうららかな4月の時。

その学校は、ひときわ目立つ威厳あるたたずまいで彼らを出迎えていた。

ここは伝統ある有名男子高校――皆星学園高等学校。

桜散る校門の前にはたくさんの新入生の姿が見える。今日は入学式が行われる祝いの日。

新入生たちが保護者と式典の会場である体育館に向かう中、一人校門の前で感慨深げに仁王立ちしている生徒がいた。

 

その新入生の名は中條琉衣。

彼は小柄な体をカッコいいと女生徒に人気のブレザーで包み、頭のてっぺんからつま先までぴちりと着こなしている。
彼は小さく深呼吸した。まるで戦場に行くかのような緊張感をもって、彼は校門をくぐった。

この有名高校の新入生には珍しく、両親の付き添いはなく、彼はひとりで進んでいった。

彼が通りすぎると、何人かがバッと振り返る。
チラチラと、彼に目をとめた者たちの視線を感じる。

多くは新入生に付き添っている母親からの熱いまなざしだ。

 

そう。彼は稀にみる美少年だった。

体型は男子としては小柄だがすらりとしている。柔らかそうな薄茶の髪はサラサラと音を立てそうなほど。
目はぱっちりとしており、白い肌に上気した頬が映える。
ふっくらとした形の良い唇を今は固く引き結び、彼はずんずんと入学式の会場へと向かった。

まるで女の子のような風貌。

そりゃそうだ。

彼のほんとうの姿は中條琉衣子という女子生徒なのである。
彼、いや彼女は訳あってこの高校に男子生徒として入学することになったのだ。

しかし今の彼女には以前のかわいらしい美少女の面影はない。
ここ半年の努力で彼女は男よりも男らしくなった。しかも完全な美少年だ。
彼女の大きな瞳から発せられる強い意志は、ここにいるどの新入生よりも人を引き付けるのだ。

 

琉衣子は体育館の前まで来て、ふっと振り返る。
彼女の眼の前にはそびえたつ有名男子校の校舎があった。

彼女は自分がここにいる理由をふと思い返していた…

 

  

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