#4 3000万の調査内容

 

…どうしよう。

じーさんの話を聞いたが、やっぱり3000万はリスクが高い。
だって…じーさんの学校って、男子校だよ!?

じーさんの頼みの全容は、じーさんが理事長を務める名門男子校に入学し、調査すること。しかも男子生徒として。
1年間ごとに500万支給、卒業したら祝い金1500万。これで全部で3000万だ。
その調査というのが女性にやさしい学校にするための改善点の調査だ。意味わかんねー。

話によると、その伝統ある男子高校は再来年度から女子学生受け入れを始めるという。
再来年度というのは私が高2になる時の新入生からだ。
そのため、男子生徒として学校の改善点を探ってほしいと。
何で男子になる必要がと思いそう言ったが、男子生徒も女子がいるとなったら気を使ってしまうだろとじーさん。
そうなりゃそうでいいじゃんとも言ったが、それじゃ意味ないじゃろがっっ!と一喝された。

その理由というのがまた笑える。
学校の理事長になった時に、本当はすぐ共学にするつもりだったらしい。
共学で、生徒たちのドキドキ青春の思い出をつくれる学校にしたかったそうだが、奥さんが猛反発。
あんたみたいな女の気持ちが理解できないような奴の学校で女生徒が幸せな恋ができるわけないわ!とな。
うーんメルヘン。
そのため男子校のままやってきたが、もうすぐ年で引退も近い。
その前にどうにか夢をかなえたいというと妻もOKしたが、それならばやはり女子生徒の目線が必要と考え、私に白羽の矢が立ったというわけだ。
私は自他ともに認めるオトコオンナだし、あながち人選は間違ってないと思うけどなんつか、こんなことに3000万もポンと出せる金持ちが恨めしくなったよ。

そんで、私が男子生徒として入学する狙いというのは男子が気を使うようじゃ幸せな恋愛なんぞできん!というじーさんの勝手な思いかららしい。
相当奥さんに気ー使ってたんだな。
実際に共学になってからも男子生徒のままっていうのはま、実際に共学になってからも調査をしろということなのだろう。

それにしても伝統ある高校を簡単に共学に変えていいのかと思ったが私が口にする問題じゃないので黙っていた。

 

「どーじゃ、いい話じゃろ」

「まぁハッキリ言って報酬は魅力ですね」

「なに。なんか問題でもあるか。うちの名門校にタダで入学して金までもらえるんじゃぞ」

「男子校ですよ?飢えた狼の巣窟ですよぉ。女の子はぁ、それでもうやってけないと思いますぅ」

自分のぶりっこ声に今鳥肌が。ぶりぶりぶり。ぞわぞわぞわっ。

「…おまえさんは男嫌いなのか?」

「まさか。でも男友達は多いですし、男兄弟も多いですからいろいろわかります」

私は目を閉じ回想した。男の本性を知った時のことを。
じーさんにはにーさんの部屋でエロ本発掘した時の衝撃はええ、わからんだろうさ。
まぁそれが男の性だから仕方あるめえ…にーさんにはそう諭された。

年頃の男はみんなこういうこと考えてるんだぞ琉衣子。でもそれを我慢してこーいう本で我慢してるんだ。偉いだろ?我慢できてこそ男だと思うだろ?
とにーさんは自分の保守に走ってた。

私も読んだけどさ、クラスの連中のを。そして捨ててやった。今思えば私も若かった…悪いことしちゃった。
まあそのおかげでそこらへんの事情には詳しくなったな。
女子の間でもそういうの回ったこともあったし。

まあ苦い青春の思い出はともかくとして、ここでじーさんの頼みを引き受けたら私は貞操とやらの危機を本気で心配することになるでしょう。
私はやだぞ、はじめてぐらい好きな人とがいいよねやっぱ。いまどき早々しちゃう子もいるらしいけど。

ああ、私にもいつか白馬に乗った王子様が来てくれないかなー…

・・・

「琉衣子、わたしはそなたを迎えに来ました」

「お、王子…様?」

「はい、わたしとともに国へ来ていただけますか」

「ハイッ!!」

・・・

ああ、男の本性をよく知ってるはずなのになんでこんな夢見ちゃうのでしょう。
せめてカッコよくて笑顔が素敵なやさしい人と付き合いたいなー。
こんなんだから彼氏出来ないんだな。理想高いってよく言われるし。
でも私よりカッコいい男なんぞそうそういない自信があるぞ。

でーもー焦らないでもあーわてたーい ここぞ!の服着たいよう♪

 

…実は持ってるデート服。勝負服ともいう。

 

男子校かぁー。いるのかなそんな人。まあ彼氏を探してるわけじゃないけど…

むさくるしいイメージしかないや。私ならむしろ女子校のほうがうまくやってける気がする。

 

そんな私のカネと貞操との葛藤(ていうか途中から妄想してたけど)を見抜いたか、じーさんはうーむとうなってから言った。

「じゃぁこれならどうじゃ。貞操を奪われたら見舞金500万。貞操を奪われない努力はこちらで大いに援助する。どうじゃ?」

「それじゃ途中で貞操奪われたらどうするんですか?」

ぷぷ。貞操奪われるとかウケるわ。

「そりゃもうやってけないじゃろ。退学だのお。まあ安心せい、再入学先は計らってやる。そこの学費ぐらいは面倒見てやるわい」

それは結構おいしい。気がする。貞操を奪われても高校中退で放置されないっていうことだ。
んー。じーさんもよく考えてるな。祝い金で1500万だから中退しても多くて1500万だ。やっぱ卒業して3000万もらうのが向こうとしてもありがたいだろう。
もし貞操を奪われるとかになって問題を起こされたら困るだろうからね。この金額はそういう口止めも含んでるはずだ。だからこそ私は一人で呼ばれた。
じーさんはどうやらなかなか私のことを買ってくれてるみたい。嬉しくないけど。

なかなかイエスを言わない私に痺れを切らしたか、じーさんは発破をかける。

「そんなに貞操を奪われるのが心配か。キミはそんなヤワな奴じゃないと思って声をかけてみたんじゃが…みこみちがいだったかの」

それが私の高校を決める起爆剤になった。

「…やりますよ!私そこらへんの男よりよっぽど男らしいんで!!」

「言ったな。もうなしとは言わせんぞ」

まんまとじーさんに乗せられた形になったが不思議に後悔はしていなかった。

やるって決めたらもう頑張るだけさ。

私は契約書にサインした。

 

皆星学園高等学校に男子生徒として入学すること

学校にて指示された事柄の調査、改善案の提示などを行うこと

報酬は1年度ごとに500万、卒業時には祝い金1500万支払う

貞操を奪われた暁には速やかに見舞金500万が支給され、退学とする
また再入学の手続きやその他雑務、学費の支払いは負担する

できる限り卒業すること

この任務は極秘であること

 

他いろいろごちゃごちゃ書いてある。契約書って面倒。でもちゃんと読まなきゃ。

 

よし。私は絶対に3000万を手にするぞ!オーッ!!

 

  

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